カープが広陵高校の中村選手をドラフト1位で指名する方針、と報道がありました。
今年の甲子園での活躍、礼儀正しく明るい人柄、地元廿日市市出身といういうこともあり、ファンの期待は高まります。
広陵高校は、春夏合わせて45回甲子園に出場し、優勝を3回果たしています。
そして、たくさんのプロ野球選手も。
現役選手では
カープ、野村祐輔、中田簾、白濱裕太、上本崇司、土生翔平
巨人、吉川光夫、小林誠司、西村健太郎
横浜、佐野恵太
阪神、上本博紀、新井良太、俊介、
日本ハム、有原航平、上原健太、
楽天、吉持亮汰選手の15名で横浜高校に次いで第2位です。
阪神の金本知憲監督、巨人の二岡智宏コーチも広陵高校出身。
広陵高校の強さの秘密と、どのような考えで指導されているのか知りたくて、野球部の中井監督が書かれた本を読んでみました。
27歳で名門校の監督に抜擢
著者の中井監督は自身も広陵高校野球部出身で、1990年監督に就任した当時は27歳でした。
名門校の監督としては異例の若さ、それだけ指導者としての実力を周りが認め、信頼されていたのだと思いますが、その時の心境を
「全国チェーンのしがない支店長が、いきなり本社の営業中枢に回されたようなものか。なにかの間違いであってほしい」
と記しています。
コーチになって4年、偉大なOBがいる中での大抜擢、「晴天の霹靂」からのスタートだったようです。
野球部のルール
150人ほどもいる野球部員のうち、県外出身者が約半分、その他市内出身で通学できる部員もほぼ全員が寮生活を送っているそうです。
それは、練習時間の確保と、寮での教育のため。家にいるとどうしても甘えが出てしまう、礼儀や挨拶、身の回りのことを自分で行う習慣…社会に出て大切なことを学びます。
携帯電話の所持は禁止、保護者との連絡は、寮の電話や手紙で行っているそうです。
スマホでのやり取りやサイトの閲覧等で多くの時間を費やし、人間関係のトラブルに巻き込まれたりすることを考えると、大切なことだと思います。
娘の通っている高校でも、進路指導の先生が受験勉強の一番の敵はスマートフォンだといいます。
それだけ便利で魅力的なものですが、勉強と野球に打ち込むこの時期には不要。寮生活に入り、先輩たちも誰も持っていない状況で、納得し慣れていくそうです。
保護者の負担を考え個人の用具購入も許可制
寮での生活費や遠征費に加え、グラブやスパイクなど用具代もかかる野球部では、用具を大切に使うことで、野球をさせてくれる親への感謝の気持ちを忘れないでほしいと考えています。
部員が買い換えたいと思っても、監督がまだ使えると判断したら購入することはできません。必要に応じて修理をしたり、卒業生が使っていた用具を譲り受けたりして極力新調することを控えているそうです。
私立の強豪校というと、とてもお金のかかるイメージでしたが、経済的な負担を減らすように考えてくれることは、子どもの教育のためにも、親にとってもありがたいことだと感じました。
公式戦メンバー入りは選手の投票で
私は運動部の経験がほとんどないので、試合に出るメンバーは監督やコーチが決めるものだと思っていましたが、広陵高校では背番号も含め、2,3年生の部員による投票で決めるそうです。
その理由として
指導者が選手を見るのは、主にグランドである。寮での生活ぶりや自主練の取り組み方、野球への思いの強さまでは目が行き届かない。
そして
生活をともにしている部員たちは、お互いが兄弟のようなものだ。長所も短所もよくわかる。その彼らから、ベンチ入りの支持を得られなかった。となると、いくら私の構想では必要であっても、投票の結果を優先する。
このやり方は、他の学校でも取り入れられているそうですが、指導者と部員の信頼関係があるからこそ成り立つものだと思います。
甲子園出場より大切なものがある
上級生から下級生による理不尽なしごきや説教、使いっぱしりの禁止、特待生への優遇なしなど平等主義を貫き、強制するのではなく自主性を重んじる監督の信念が書かれています。
支えてくれる周りの方や奥様、広陵高校に入学した息子さんとの関係など、夫婦関係、子育てや仕事上での問題で、ヒントになるようなエピソードが満載。
息子も将来こんな監督に指導してもらえたらなと(まだ小1ですが…)夢見てしまいます。
以前野球部の部長をされていた堀先生(現在は教頭先生)のことも書かれています。講演を聞いたことがありますが、温かい人柄で子どもの教育に強い思いを持った先生、楽しく感動的なお話で、心に残っています。
広陵高校は人間的な成長を大切にしてくれる環境が整っていて、多くの選手がプロでも活躍しているのだと感じます。
そして、あの10年前の佐賀北高校との決勝戦後の談話の真意 、生徒に伝えたかったことは…。
全てを読めば、
甲子園出場より大切なものがあるという監督の想いに納得です。